新学術領域研究(研究領域提案型) 脳タンパク質老化と認知症制御

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公募班(H29-H30年度)

氏名 小野 正博
所属・役職 京都大学大学院薬学研究科
准教授
研究課題 SPECTによるタウイメージング法の開発
研究概要 アルツハイマー病脳内の特徴的病理変化として、βアミロイドタンパク質(Aβ)の凝集体から構成される老人斑とタウタンパク質の凝集体を主要成分とする神経原線維変化が知られている。本研究は、Aβ凝集体の蓄積に比べ、臨床症状との高い相関性が認められるタウ凝集体を標的とする新規SPECTイメージング法の開発を目指す。昨年度までの本新学術領域研究班として、SPECT用タウイメージングプローブの構造活性相関に関する研究を実施し、ベンゾイミダゾピリジン(BIP)を母核とする放射性ヨウ素標識誘導体が、Aβ凝集体への結合性は認めず、タウ凝集体への高い選択的結合性を有すること、さらに、これら誘導体を正常マウスに投与した場合、高い脳移行性と速やかなクリアランスを示すことを独自に明らかにしてきた(Ono et al., Sci Rep, 6, 34197, 2016)。本研究では、新規タウSPECTイメージングプローブの臨床応用に向けて、様々な置換基を導入したBIP誘導体を新たに設計・合成し、それらの特性評価と構造最適化を行う予定である。
氏名 水田 恒太郎
所属・役職 京都大学
助教
研究課題 アルツハイマー病の神経回路長期可視化による機能破綻過程の解明
研究概要 アルツハイマー病では、老化したタンパク質が蓄積することで神経回路破綻が起き、認知機能低下を引き起こす。その患者は初期症状として空間記憶障害を持つことが知られている。空間記憶には海馬が重要な役割を果たすが、その神経機能回路の破綻過程は詳しくわかっていない。これは、これまでの研究手法では海馬神経細胞活動が数日しか観察できなかった為である。本研究は、我々がこれまでに確立したin vivo 深部脳イメージング、蛍光カルシウムセンサータンパク質発現を発現するトランスジェニックマウス、およびマウス用バーチャルリアリティ(VR)システムなどの先端技術を用い、顕微鏡周囲に作り出されたVR環境下で行動する次世代型アルツハイマー病モデルマウスの約1000個の細胞からなる海馬神経回路活動を、単一細胞解像度の二光子カルシウムイメージングで数か月間長期観察する。VR認知学習課題を行うアルツハイマー病モデルマウスの海馬微小回路において、異常な細胞の出現、脳老化タンパク質の出現・蓄積から機能回路破綻といった過程を可視化し、その病態の機序を解明する。
氏名 足立 弘明
所属・役職 産業医科大学 神経内科学講座
教授
研究課題 神経変性疾患の治療法開発へ向けたオートファジー関連分子の機能解明
研究概要 神経変性疾患では、病因となる蛋白質が神経細胞内で異常な凝集体を形成して蓄積する過程で細胞毒性を起こして神経細胞死に至る。オートファジーは、細胞内でこれらの異常な蛋白を分解するシステムとして重要な役割を果たしており、この機能を効率よく利用することで副作用の少ない有効な神経変性疾患の治療を開発することができると考えられる。私達は、オートファジー活性化作用のある化合物を見い出している。本研究では神経変性疾患モデルにおける異常蛋白質の分解効果の分子機構を細胞、分子、超微形態レベルから明らかにすることで、これらの薬剤によるオートファジーの活性化機構を解明するとともに、その機序に基づいた神経変性疾患の治療に有望な方法を開発する。さらに、オートファゴソームとリソソームの融合におけるdynactin1の関連分子とそのメカニズムを解明し、病因蛋白質の除去に対する役割を明らかにする。
氏名 福田 光則
所属・役職 東北大学大学院生命科学研究科生命機能科学専攻膜輸送機構解析分野
教授
研究課題 蛋白質老化におけるRab活性制御の分子機構の解析
研究概要 小胞輸送の普遍的制御因子である低分子量G蛋白質Rabは、その名前の由来通り(ras genes in RAt Brain)特に脳組織での発現が高い。また、Rabやその制御因子の変異により20種類を超えるヒトやマウスの遺伝病が報告されており、その多くが神経疾患の症状を呈する。しかし、これらのRabがどのような小胞輸送経路に関与し、神経機能を制御しているかは未だ不明な点が多い。当研究室ではこれまで、哺乳動物に存在する全てのRabファミリーやその制御因子を対象に、神経突起の伸長や形態形成への関与を網羅的に解析し、神経細胞におけるRabの新たな機能を解明してきた。その過程で、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因遺伝子産物として知られるALS2やC9ORF72がこれまで知られていないRabと機能的に相互作用することを見出した。ALS2やC9ORF72に関しては、その変異によりALSを発症することは周知の事実であるが、これらの正常分子の神経機能は十分には理解されていない。また、最近これらの分子のオートファジー制御への関与も報告されているが、その詳細な制御機構は明らかになってない。そこで本研究では、ALS2やC9ORF72の新規ターゲットRab分子に着目し、これらが制御する小胞輸送経路やオートファジー経路との関連性を解明すると共に、脳内蛋白質の老化・凝集を防ぐ機構を探求する。
氏名 長谷川 隆文
所属・役職 東北大学大学院医学系研究科神経・感覚器病態学講座内科学分野
准教授
研究課題 異常タンパク質内在化を標的とした新規シヌクレイノパチー疾患修飾療法の確立
研究概要 近年、パーキンソン病(PD)をはじめとする複数の神経変性疾患において、異常凝集タンパク伝播による病理進展(プリオン仮説)が注目されている。一方、個々のプリオノイドタンパクの生化学的特性や細胞の種類、ストレス状況によって伝播機構が異なる可能性がある点に留意する必要がある。これまでに我々はPD病態の主役であるαシヌクレイン(aS)の吸収・分泌・分解に関与する膜輸送機構を詳細に渡り明らかにしてきた。本研究では、これらの成果をさらに発展させ、疾患修飾療養への道を切り開くべく、エンドサイトーシス阻害剤などのリード化合物によるaS伝播抑制効果をin vivoにて検証する。また、神経・グリア細胞表面に発現する未知のaS受容体について、全脳由来膜タンパク質ライブラリー(MPL)/BLOTCHIP-MS法による網羅的探索を行う。さらに 将来の疾患修飾療法の臨床応用を見据えてシヌクレイン・タウPETイメージングのサロゲートマーカーとしての有用性を検証する。
氏名 橋本 唯史
所属・役職 東京大学大学院医学系研究科神経病理学分野
特任准教授
研究課題 ALS病因タンパク質FUSの細胞間伝播及び神経細胞障害性発揮メカニズムの解明
研究概要 近年神経変性疾患の病因タンパク質が神経細胞間を伝播する現象が報告され、その分子メカニズム、封入体形成への関与、さらに神経変性との関連が注目されている。本研究では筋萎縮性側索硬化症の病因タンパク質として同定されたFUSに注目し、FUSの細胞間伝播機構を解明し、さらにFUSによる神経毒性発揮機構についても明らかにする。そのため本研究では、これまでに作出したヒトFUSを網膜視神経細胞に過剰発現することにより、神経変性を呈するFUSトランスジェニックショウジョウバエに加え、新たにbi-molecular complementation assayを利用したFUS伝播センサー細胞、及びドナー神経細胞からレシピエント神経細胞へのFUS伝播を可視化するため、FUSとdTomatoをバイシストロニックに発現するマウスを作出する。そして、これらを組み合わせて使用することにより、上記課題の解明を行い、細胞間伝播の抑制が病変拡大・神経変性を抑制しうるか検証する。
氏名 田井中 一貴
所属・役職 新潟大学脳研究所
特任教授
研究課題 3D免疫染色によるタンパク質の老化基盤の解析
研究概要 老化における神経変性疾患において、病変マーカーとなるタウ、αシヌクレイン、TDP-43、プリオン、並びにそれらに関連するタンパク質分子の立体的な局在を包括的に観察することができればタンパク質老化基盤の分子機構を解明する手掛かりが得られると期待できる。本研究では、ヒト脳生検・剖検サンプルのおよそ1 cmブロックを高度に透明化する新規透明化プロトコールの開発に取り組むと共に、シート照明型蛍光顕微鏡による高速・高解像度イメージング解析基盤を確立する。また、老齢サンプルではリポフスチンなどの自家蛍光による高度なバックグラウンドが予想されるため、自家蛍光を効果的に抑制する手法の開発に取り組む。更に、脳組織の構造を描出する種々の3D蛍光染色プロトコール、並びに各種病変マーカーを可視化する3D免疫染色プロトコールを確立することで、タンパク質老化基盤の分子機構の解明に貢献する。
氏名 山田 薫
所属・役職 東京大学大学院医学系研究科・神経病理
助教
研究課題 細胞間伝播を導くタウの細胞外量調節機構の解明
研究概要 アルツハイマー病をはじめとする神経変性疾患では、正常には可溶なタウ蛋白質が脳内で不溶化し神経原線維変化 (NFT) として細胞内に異常蓄積することが知られており、タウオパチーと総称されている。 しかしながら、タウオパチーにおいて細胞死の原因となるNFTがどのように蓄積するのかは未だ不明である。近年NFTが神経細胞から神経細胞へ伝播しながら進展することが報告された。細胞間伝播は細胞外に存在し、凝集の核として働くseedタウにより進行することが知られている。そこで本研究では伝播を導く細胞外seedタウ分子を特異的に検出することで、その細胞外レベルを調節する分泌とクリアランスのメカニズムを明らかにし、細胞間伝播への寄与をin vitro、in vivo両レベルで包括的に解明することを目指す。
氏名 森下 英晃
所属・役職 東京大学大学院医学系研究科分子生物学
助教
研究課題 オートファジーによる脳神経変性疾患の抑制メカニズムの解明
研究概要 オートファジーは細胞内の代表的な分解系であり、異常なタンパク質やオルガネラを分解することで細胞内の恒常性を維持している。この作用は神経細胞で特に重要であり、最近、ヒトオートファジー関連遺伝子への変異が認知症やパーキンソン様症状を引き起こすことが報告された。しかし、オートファジーが脳内のどこでいつ活性化しているのかや、オートファジーの破綻がなぜ神経変性を引き起こすのかはほとんど解明されていない。本研究では、オートファジーによる神経変性抑制のメカニズムの解明を目的として、まず老化過程などでのオートファジーの活性化状態を解明する。さらにオートファジー関連因子に変異をもつヒト脳神経変性疾患のモデルマウスやゼブラフィッシュを解析し、脳神経変性の発症機構を解明する。
氏名 松井 秀彰
所属・役職 新潟大学超域学術院脳病態解析分野(脳研究所内)
准教授
研究課題 αシヌクレイン老化が引き起こす個体老化パーキンソン病
研究概要 パーキンソン病はその発症に老化が強く関連しています。私達はこれまで”寿命最短・最速老化”脊椎動物=アフリカメダカが遺伝子操作や薬物負荷なしに加齢のみでヒトパーキンソン病に類似した病態を呈することを見いだしました。本研究計画ではパーキンソン病の病態を特に加齢・老化との関連で理解するために、アフリカメダカ、代表的なモデル動物であるマウス、そしてヒト試料等を縦断的に解析し、以下にあげる3つの疑問に挑戦します。
I. 病変はどこから発症するのでしょうか?
II. 病変の進展をもたらすものは何でしょうか?
III. 細胞死をおこすメカニズムは何でしょうか?
これらのポイントにおける病態をそれぞれ明らかにし、発症、進展、細胞死、それら各ステップにおける介入のストラテジーを確立します。そしてパーキンソン病と老化との強い関連を詳らかにすること、ならびに老化モデルアフリカメダカを他の現象や疾患にも適用することで本領域の推進に貢献します。
氏名 田中 洋光
所属・役職 京都大学大学院理学研究科 生物科学専攻
助教
研究課題 Aβオリゴマーによるグルタミン酸受容体の局在変異の解明
研究概要 私たちはこれまで、ガラス面をシナプス接着因子であるニューレキシンでコートし、その上に海馬神経細胞を培養することで、シナプス後膜様構造をガラス面上に形成させることに成功した。そして、そのシナプス後膜内外における蛍光標識したグルタミン酸受容体の動態 (エキソサイトーシス、エンドサイトーシス、側方移動) を、全反射顕微鏡を用いて高シグナルノイズ比、高時空間分解能でライブイメージングできる独自の実験系を構築した。本研究では、この新可視化実験系を用いて、Aβオリゴマーがシナプス後膜におけるAMPA型グルタミン酸受容体の局在にどのように作用して、シナプス可塑性といったシナプス機能を障害させるのかを明らかにする。これにより、アルツハイマー病の発症分子機構の解明、及び記憶・学習が成立する基礎過程の解明に貢献することを目指す。
氏名 高橋 良輔
所属・役職 京都大学医学研究科臨床神経学
教授
研究課題 αシヌクレイン伝播に基づく新規パーキンソン病モデルマウスの作製と病態解析
研究概要 最近の研究でα-Synフィブリルを実験動物の脳に接種することにより、脳内にLewy病理が形成され、神経回路に沿って伝播することが示されています。これにより、パーキンソン病(PD)の嗅球・消化管や線条体へのα-Synフィブリル接種による新規PD動物モデルの開発が可能になりました。前者は最初期病変から病態の進行を再現し、後者はLewy病理を伴って黒質緻密部ドパミン神経細胞脱落を示すことが期待されます。
私たちは、生理的な発現パターンを維持した状態でα-Synを外因性に発現させたα-Syn(A53T) BAC Tgマウスを作製しました。同マウスにα-Synフィブリルを接種すると、伝播が劇的に促進されることを見出しています。本研究では、α-Syn(A53T) Tgマウスにα-Synフィブリルを接種し、新規PDモデルを確立するとともに、病態解明と治療薬候補物質の薬効検証を行います。
氏名 永井 義隆
所属・役職 大阪大学大学院医学系研究科神経難病認知症探索治療学
寄附講座教授
研究課題 RNA 結合タンパク質による異常RNA 蓄積に対するリボスターシス維持機構の解明
研究概要 C9orf72遺伝子連鎖性の家族性筋萎縮性側索硬化症/前頭側頭葉型認知症(C9-ALS/FTD)などのノンコーティングリピート病では、異常リピートRNAがRNA fociとして神経細胞内に蓄積するだけでなく、RNA結合タンパク質(RBP)の凝集・蓄積も認めるが、異常リピートRNAとRBPを結ぶクロストークは全く未解明である。私たちは最近、ノンコーティングリピート病の一つ脊髄小脳失調症31型(SCA31)のショウジョウバエモデルにおいて、RBPであるTDP-43がRNAシャペロンとして働き、異常UGGAAリピートRNAの蓄積およびリピート関連性翻訳を抑制し、その結果神経変性を抑制することを見出した(Ishiguro et al. Neuron 2017)。本研究では、本知見に基づいて異常リピートRNAとRBPのクロストークに着目し、RBPによるRNA恒常性(リボスターシス)維持機構の解明を目指す。
氏名 坂口 末廣
所属・役職 徳島大学先端酵素学研究所次世代酵素学研究領域神経変性病態学分野
教授
研究課題 プリオン以外のプリオン病の病原体の同定とその病原性の解明
研究概要 プリオン病では、神経細胞に発現する正常プリオン蛋白質が蛋白質分解酵素抵抗性の異常プリオン蛋白質に構造変換し、病気が起こる。しかし、ヒトのプリオン病では、プリオンの感染で起こる感染性プリオン病は全プリオン病の1%以下であり、プリオン蛋白質遺伝子の変異により起こる遺伝性プリオン病は10%程度である。ヒトのプリオン病の大部分を占める孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病では、原因不明である。 
正常プリオン蛋白質から異常プリオン蛋白質への変換を試験管内で行なう技術が確立された。この技術を用いて、正常プリオン蛋白質から異常プリオン蛋白質への変換にはRNAと脂質が必要であることが報告された。これらの結果は、プリオン以外にも、正常プリオン蛋白質から異常プリオン蛋白質への変換を誘導できることを示している。本研究では、正常プリオン蛋白質から異常プリオン蛋白質への変換を誘導するプリオン以外の病原体の同定を行なうとともに、その変換メカニズムの解明を行なう。
氏名 安藤 香奈絵
所属・役職 首都大学東京理工学研究科生命科学専攻
准教授
研究課題 アルツハイマー病関連タンパク質タウの凝集体形成と神経変性の関係
研究概要 微小管結合タンパク質タウは、アルツハイマー病などの神経変性疾患で、細胞内に過剰に蓄積し神経細胞死を引き起こす。疾患脳ではタウはモノマー、ダイマー、オリゴマー、顆粒状オリゴマー、繊維など様々な凝集体を形成しているが、それらの凝集体形成と細胞毒性の関係については不明な点が多い。そこで、本研究では、すぐれた遺伝学的モデルであるショウジョウバエを用い、特定の凝集体を作りやすい変異タウを発現させ、各種凝集体について神経細胞毒性を比較する(目的1)。また、それらのタウ凝集体と安定性の関係についても調べる(目的2)。本研究からタウの毒性に関する新たな知見が得られ、将来哺乳類、iPSモデルや創薬など領域内の応用的な研究と連携することで、当該領域の目的である認知症の予防や治療の発展に結びつくと期待される。
氏名 太田 悦朗
所属・役職 北里大学医療衛生学部
講師
研究課題 疾患特異的iPS細胞におけるタウを介した神経変性機構の解析
研究概要 優性遺伝パーキンソン病(PD)の原因分子であるLeucine-Rich Repeat Kinase 2(LRRK2)に変異をもつ患者は、孤発性PD と類似した特徴を示すことに加え、認知症の併発が一部で報告されている。そのためLRRK2 は、認知症の発症にも何らかの影響を及ぼすことが考えられる。我々は、LRRK2に変異をもつ遺伝性PD 患者から樹立したiPS 細胞(iPSC)を用いて、PD 患者の脳内における病態を再現し、ドーパミン放出異常やオートファジーの機能不全、リン酸化Tau の増加など発症メカニズムの一端を明らかにしている。本研究では、新たに樹立したゲノム編集で遺伝子修復したPD 患者iPSC を用いて、3R-Tauや4R-Tauが引き起こすPDおよび認知症の発症メカニズムを明らかにする。さらに、microRNA を用いて皮膚線維芽細胞から直接誘導した領域特異的神経細胞、iPSC 由来神経幹細胞移植マウスの解析によって、変異LRRK2 によるTauを介した神経変性機構の解明を目指す。
氏名 古川 良明
所属・役職 慶應義塾大学理工学部
准教授
研究課題 異常構造型脳タンパク質による神経変性疾患発症メカニズム
研究概要 認知症・神経変性疾患の発現機序には、未だ多くの謎が残されている。遺伝子変異による家族歴が見られるごく一部の症例を除くと、大部分の患者は孤発性で、疾患がなぜ発症したのかを明らかにすることは非常に困難である。本課題では、異常構造を有した脳タンパク質の毒性が生物個体に伝播し、神経変性疾患を発症させる可能性について検証する。タンパク質の構造異常は加齢に伴う脳老化の一つで、毒性発現のための重要な分子機序と考えられる。よって、脳タンパク質の毒性がプリオン的に生物個体へと伝播しうるのか、精製タンパク質と独自の生物モデルを用いて検証し、脳タンパク質老化の細胞間伝播・感染性獲得メカニズムについて解明する。
氏名 深田 正紀
所属・役職 生理学研究所
教授
研究課題 LGI1を中心とするシナプス蛋白質ネットワークの老化と認知症の分子病態
研究概要 シナプスの機能障害は認知症発症の主要な初期病態と考えられている。私共は、脳の興奮性シナプス伝達を司るAMPA型グルタミン酸受容体の制御機構の解明に取り組み、AMPA受容体制御蛋白質としてLGI1-ADAM22リガンド-受容体を見出した。さらにLGI1-ADAM22の結合障害がてんかんや記憶障害を惹起することを明らかにしてきた。本研究ではこれまでの成果をさらに発展させ、1)LGI1を中心とする蛋白質ネットワークの加齢に伴う変化、2)LGI1-ADAM22経路の破綻による病態機構の解明、3)脳内LGI1可視化・定量法の開発を通して、LGI1-ADAM22システムの老化が認知症発症に果たす役割を解明する。
氏名 坂内 博子
所属・役職 JSTさきがけ/理化学研究所
さきがけ専任研究者
研究課題 1分子イメージングによる老化脳タンパク質の細胞毒性機序の解明
研究概要 本研究では、膜分子動態の解析技術「超解像1分子イメージング法」と新規カルシウム解析法を基盤に,「脳タンパク質老化」が引き起こす「異常な膜分子動態」・「細胞内カルシウムシグナルの異常」を検出し、それらが神経細胞毒性を及ぼすシグナルカスケードを分子レベルで明らかにする。最終的には、老化脳タンパク質が神経細胞毒性を及ぼすスキームを理解することを目指す。神経毒性の新たなバイオマーカーとして「膜分子動態」を提示し、膜分子動態・カルシウム異常を切り口としたシグナルカスケード解明を通じて認知症制御のためのシーズを発掘することにより、「脳タンパク質老化による細胞毒性とその抑制メカニズム解明および病態マーカー開発」という当該領域の目標達成に貢献する。
氏名 濱田 耕造
所属・役職 理化学研究所・脳科学総合研究センター
研究員
研究課題 タンパク質老化とその毒性機序における小胞体カルシウムの役割
研究概要 認知症の原因となるタンパク質はオリゴマーや繊維状構造へと変化することが知られている(タンパク質老化)。しかし、このタンパク質老化のプロセスが細胞内でどのように制御されているか不明な点が多く、その結果として生じるタンパク質老化の産物がどのような分子機構により細胞機能や毒性、伝播機能を獲得するのか十分には解明されていない。本研究ではシナプス可塑性や小胞体ストレスなどの様々な細胞内プロセスに重要な「小胞体カルシウム」がタンパク質老化そしてその毒性機序に関与する可能性を検証する。これまでに神経変性の原因とされるタンパク質が小胞体カルシウムチャネルに作用し細胞内シグナル伝達を調節することを見出した。これを発展させ本研究期間では原因タンパク質によるシグナル調節の分子メカニズムを研究し細胞機能・毒性との関与を明らかにする。
氏名 貝淵 弘三
所属・役職 名古屋大学大学院医学系研究科神経情報薬理
教授
研究課題 新規プロテオミクス法を用いた神経変性疾患の分子病態解明
研究概要 認知症は高い生涯罹患率をもつ難知性の神経疾患であり、医療・介護面で社会的負担が大きく、経済的損失が極めて高いことから当該疾患の予防・改善が喫緊の課題となっている。認知症においてアルツハイマー型の神経変性疾患は発症割合が最も高く、その患者脳では老人斑や神経原線維変化のような特徴的な病理所見が認められる一方で、老人斑や神経原線維変化が如何にして形成され、細胞機能に対して如何なる影響を及ぼしているかについては十分に理解できていない。最近、研究代表者らはリン酸化酵素特異的にリン酸化基質とそのリン酸化サイトを同定する、新たなリン酸化プロテオミクス法を開発した(Amano et al. J Cell Biol, 209, 2015; Nagai et al. Neuron, 89, 2016)。また、神経原線維変化の主成分であるタウ蛋白質についてリン酸化部位特異的な責任リン酸化酵素を明らかにしている。本研究では疾患患者由来iPS 細胞および神経分化細胞を用いて新規プロテオミクス法によるリン酸化シグナルの網羅的解析を行い、疾患特異的に関与するキナーゼシグナルを特定する。そして、光活性型キナーゼ変異体や各種キナーゼ阻害剤を用いて当該シグナル伝達経路を人為制御することで上述の疾患病変の表出を模倣、または改善できるかについて検討を行う。これらの解析から研究代表者は神経変性に関わるシグナル基盤解明を目指す。
氏名 望月 秀樹
所属・役職 大阪大学大学院医学系研究科神経内科学
教授
研究課題 パーキンソン病患者iPS細胞由来ニューロンを用いた新たなマウスモデルの創出
研究概要 パーキンソン病(PD)は本邦において2番目に多い神経変性疾患である。PDの病態機序として神経細胞内でαシヌクレインが構造変化を起し、凝集してαシヌクレイン凝集体を形成する。そのαシヌクレイン凝集体が神経細胞を伝播し拡散するというPropagation仮説が議論されている。この病態を再現するために、大腸菌由来組み換え蛋白質凝集体の注入による従来法ではなくPD患者由来iPS細胞から分化させたPD患者由来神経細胞、つまりPD発症に伴う細胞内環境を移植することでよりヒトに近いPDモデルマウスの開発とその病態解明を目的とする。
氏名 内山 圭司
所属・役職 徳島大学先端酵素学研究所神経変性病態学分野
准教授
研究課題 細胞内小胞輸送活性化による老化脳タンパク質分解促進機構の解明と治療への応用
研究概要 プリオン病は、プリオン蛋白質(PrP)が原因で発症する致死性の神経変性疾患で、正常プリオン(PrPC)からその構造異性体であり病原性を示す異常プリオン(PrPSc)への構造変換そして、PrPScの蓄積がプリオン病の病態において中心的役割を果たしていると考えられている。しかし、そのメカニズムは未だ未解明である。PrPは、通常、PrPCとして大部分が細胞表面に発現している。しかし、これまでの研究過程で、PrPScは細胞内の様々なポストゴルジコンパートメントに蓄積しており、プリオン病では様々なPrPScの細胞内小胞輸送経路が障害されていることが示唆された。我々は、これまでにプリオン感染が、PrPのリソソーム分解経路へのsorting receptorとして働くSortilinの機能を障害しPrP分解を抑制することが、PrPScの過剰蓄積の原因の一つであることを明らかにした。しかし、なぜ細胞膜への移行が抑制されリサイクル経路に蓄積するのか、その機構を明らかにはできていない。現在、我々は、プリオン感染細胞においてPrPScの減少を引き起こす物質を発見している。この物質を含む培地で培養すると細胞内に蓄積していたPrPScが細胞膜に移行しその後、再び細胞内へ移行し分解される。本研究では、この物質の作用機序を明らかにするとともに、PrPScが細胞内から細胞膜へ移行するために必要な細胞内小胞輸送機構を明らかにすることにより、未だ有効な治療法がないプリオン病の治療法開発の基盤となる研究を行う。
氏名 岡田 洋平
所属・役職 愛知医科大学
准教授
研究課題 iPS細胞由来ニューロンでみられる異常タンパク凝集に依存しない早期病態の解明
研究概要 患者自身の体細胞を用いて作成される疾患特異的ヒトiPS細胞は、分化誘導により患者自身の疾患感受性細胞を得ることができるため、患者の病態を忠実に反映する優れた疾患モデルとなり得る。また、iPS細胞の分化誘導過程を解析することで、疾患の発症や病態の進行過程をin vitroで再現し、その分子病態を解明できる可能性がある。多くの神経変性疾患では、異常タンパクの蓄積により神経変性が誘導されるが、本研究では、神経変性疾患患者から樹立した疾患特異的ヒトiPS細胞を神経系細胞へと分化誘導し、その分化成熟過程をつぶさに観察することで、疾患の発症過程でみられる早期の病態変化、異常タンパクの蓄積、神経変性過程の詳細な解析を行う。特に、異常タンパク蓄積前の早期病態に着目した解析を行うことで、神経変性が進行する前の早期診断や早期治療の標的となり得る分子病態を解明する。
氏名 加藤 孝一
所属・役職 国立精神・神経医療研究センター脳病態統合イメージングセンター
室長
研究課題 髄鞘化を特異的にイメージングするPETトレーサーの開発
研究概要 本研究では髄鞘を特異的にイメージングし、高感度で定量化するPETトレーサーの開発を目的とする。
髄鞘の障害はアルツハイマー病等の認知症性疾患において認められる。このことから髄鞘の変化をPETで定量することができれば、髄鞘イメージングは認知症を鑑別する新しい指標に加わる可能性も出てくる。さらに、脱髄を伴う髄鞘の障害には活性化ミクログリアの活動が関わっている。ミクログリアの作用には、障害性のみならず細胞保護性のものもあり、その活動の見極めは治療効果の評価だけでなく治療の判断の標的となっている。
髄鞘化に特異的なPETイメージングが可能になれば、認知症の画像疾患診断、治療評価の精度をより一層高めることにつながると考えられる。さらにミクログリアの免疫作用を画像で捉えることは、認知症に対する新たな治療戦略を見出せる可能性があり、今後、認知症の克服に向けてますます重要になると予想される。
氏名 赤松 和土
所属・役職 順天堂大学大学院医学系研究科ゲノム・再生医療センター
特任教授
研究課題 疾患iPS細胞を用いた脳タンパク質老化モデルの構築と治療薬の開発
研究概要 神経変性疾患患者中枢神経系におけるαシヌクレイン異常凝集・局在異常・蓄積は疾患発症に深く関わっていると考えられる。本研究では患者由来iPS細胞から誘導した細胞を用いてαシヌクレイン凝集をハイスループットに定量する方法を開発し、病態解明と異常凝集を改善する薬剤のスクリーニングを行うためのツールとして確立する。一方で発症まで50-60年を要する遅発性の変性疾患を数週間の培養期間で再現する方法を開発している。これらの手法と患者特異的iPS細胞や遺伝子編集を行ったiPS細胞を用いて、従来よりも高精度で再現度の高いαシヌクレイン凝集モデルシステムを確立し、新たな病態メカニズムの発見と創薬を目指す。