新学術領域研究(研究領域提案型) 脳タンパク質老化と認知症制御 国際活動支援班

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国際活動支援報告

2019年3月6日(水)

訪問者:首都大学東京 浅田明子

【研修報告】MAX PLANCK FLORIDA INSTITUTE FOR NEUROSCIENCE One Max Planck Way Jupiter, Florida 33458
(1)研修報告
今回の研修では、北米Max planckのフロリダ神経科学研究所(MPFI)のNeuronal Signal Transduction研究室(安田涼平先生)訪問および同研究所で2/18から3/3迄開催されるNeuroimaging course 2019に参加しました。安田先生は、2光子蛍光顕微鏡と、新しいバイオセンサーを開発することによって、神経細胞の1つ1つのスパイン内部の情報伝達の様子を可視化しておられるこの分野での第一人者です。研修期間中にスライスを用いたイメージングや液体レンズのoptimization,スライスカルチャーの作成等を見学させていただき、ハードについても概略をご説明頂きました。[/caption
研究室の訪問期間に研究所でNYU Langone HealthのBerunardo Rudy博士による‘The Organization and Function of Enigmatic Layer 1’と題したLayer 1 におけるInterneuronの詳細な分類の総説とも言うべき講演が、また、地元の高校のホールでScience meets musicと言う認知についての一般向けの講演と音楽を組み合わせた、地元の方が多数参加する楽しいセミナーが開催されました。
コースは主に2光子顕微鏡を用いた神経科学の分野での最新イメージング技術を包括的に習得することを目的として開催され、ポスドクはじめearly careerにある参加者21名のうち女性が15名、国籍は多彩でした。構成は午前中に講義、午後は実験、夕食後は講義または実験、最終日に実験の発表となっています。実験に入る前に一日かけて9つのプロジェクトを4グループに分かれて説明を受け、その中から希望する実験を2-3名のグループで行いました。GultamateやGABAのuncagingによるGCaMPでのcircuit mappingやスパイン形態の可塑性観察、 in vivo でのFLIM、Slice cultureを用いた観察等、興味深い内容ばかりでした。また、観察したい脳領域の頭蓋骨を除いてカバーグラスで塞ぐcranial window、さらに皮質の一部も除くmicroendoscopy、前もってグリンレンズとプローブを取り付けたマウスにminiature microscopeをセットし、自由行動下で行うイメージングのデモンストレーションもありました。講義ではこれらの実験を主催する研究室のPIによる講義のほかにもレーザーの基本や解析ソフトについての解説もあり、実際に自分たちでレーザーとミラーの配置をする演習もあって、機器やソフトをブラックボックスとして終わらせず、仕組みを理解させるという姿勢がありました。また、2光子顕微鏡のみならず、MPFIにもある電子顕微鏡や超解像度顕微鏡、さらには誘導ラマン散光(Stimulated Raman scattering)顕微鏡の仕事の紹介もされ、2光子顕微鏡との併用でいかに可能性が広がるか、と言う視点も得られました。特別講義として2014年にノーベル賞を受賞したDr. Edvard Moserによる’Space, time and memory in the brain’と題した講義があり、夕食後にはDr. Moserを囲んだDiscussionも企画され、あまりの内容の充実ぶりに、消化しきれないとの嬉しい悲鳴が参加者の間で交わされたほどです。実験ではTAの指導の下、それぞれの選んだ実験を行いました。私はin vivo FLIMの実験を選びました。まだ発表されていないFRIMプローブを用いて視覚刺激による視覚野の長期増強を1日、2日、6日とタイムコースを追って取得し、解析するという実験です。グループメンバーに大変恵まれて非常に有意義に過ごせました。発表時間は15分、質問が5分となっており、的確な質問や機知あふれる発表が好意的な雰囲気の中で行われました。
 2週間のうち、日曜だけは午前で終了し、午後は自然公園へのエクスカーションが催行されました。レンジャーの方の説明を聞きながら公園内を散策し、フロリダのビーチで過ごす半日は出席者との交流も深まり大変楽しかったです。向上心あふれる若手の研究者たちとコースでの研究、討論、さらにはそれぞれの仕事や状況についての難しさを語り合い、交流できたことは本当に得難い体験でした。今回のご支援をいただいたことを心より感謝いたします。

(2)新学術領域研究への貢献
私たちのグループではタウのリン酸化、代謝に焦点を当てて研究を進めています。リン酸化タウは細胞体に蓄積することが報告されています。今回訪問したMPFIでは、自閉症モデルマウスの神経回路について解析を行っていました。2光子顕微鏡の特質である深部でのイメージングは、タウの変性と神経変性の端緒の解析にも役立つと感じました。今回得た技術と知識を本領域に生かしていきたいと思います。

首都大学東京・生命科学専攻
神経分子機能研究室
浅田 明子